蚕都上田:大雪で段々畑の桑園跡が「見える化」

2014年2月の大雪で、信州上田の山の中腹に無数の白い横縞模様が見えてきました。何なのでしょうか、この縞々模様。不思議な風景だと思いませんか?

ふだんは普通の山でしかありません。たまたま雪が降ったことによって、横縞模様がはっきりと見えるようになったのです。

このような横縞模様が自然の造形でないことはおわかりいただけますでしょうか?

明らかに人工的なものです。
実はこの横縞模様の正体は、昔、山の中腹にあった段々畑の桑畑の痕跡なのです。

山岳で囲まれた信州の中でも上田は、太平洋気候と日本海気候の境界に位置し、上田の気候はどちらかというと太平洋側の影響を受けます。そのため、真冬でも雪は少なくよく晴れます。そのため山々に雪はないのです。白い横縞模様は滅多に見ることができない、極めてめずらしい風景です。何年ぶりかの大雪でその光景が見えてきました。

これらの山々の麓には旧北国街道が通っています。その中でも上田市塩尻地区(下塩尻、上塩尻、秋和)は全国で最も蚕種製造が盛んだった地域として知られています。街道も集落も山麓沿いに延びています。

これらの建物は「蚕室」と呼ばれるものです。
蚕を飼育するための建物です。普通の農家では養蚕をしていましたが、この地域の養蚕は繭をとるためのものではなく、養蚕の原料となる蚕の卵を取るためのものです。これを蚕種製造と言います。

この地域は耕地にできる平坦な土地が少なく、すぐ近くには千曲川が迫っています。蚕を飼うため、使える土地は全て桑園にして蚕種製造業を支えてきました。千曲川の河川敷は全て桑園。山々も8合目近くまで桑園。つまり山は山林ではなく、段々畑として造成され、桑が栽培されていました。

雪が降ったら、上田で山の不思議な横縞模様を見てみませんか?

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