上田紬の縞や格子の技を生かしながら、着物好きの女性たちがうっとりするような着尺を織り出している小山憲市さん。2012年の新作展が10月に長野市で開かれました。いま力を入れていることや新作のポイントなど、お話を聞いてきました。
小山さんが一番心を配っているのはイメージ通りの色を出すこと。新たな着物を作る時には、衣装図を何枚も描いて、どんな着物にするのかを具体的にしていきます。それに合わせて、どんな糸を使い、どんな色に染めるのか、柔らかさは、つやは、とこと細かく決めていきます。経験と感性を生かし、きっちりとした「設計」をするそうで、着物を作るのはここの段階が一番大事なのだと、教えられました。
その着物を作るために「色は妥協しません」ときっぱり。糸を染めたら、天気のいい日に日陰で色をチェック。違うと思ったら染め直し。どんな色かは、自分の頭の中になるので、人に任せられないそうです。苦手な色にも挑戦したりして、色の幅を広げていると、発展途上! 染めにはクルミ、栗、柳などの地の物のほか、カリヤス、茜なども使い、化学染料の良さも活用しています。
「ドラえもんのポケットを増やしたい」と小山さん。
色を出す技術も、織りの表現も、布の表情も、幅を広げて、いろいろなことができるようになりたいとのこと。昔の着物に比べれば、できることがどんどん増えている、そうです。(以前のものは、その時、その時で、すばらしいと私は思うのですが…)
新作を紹介してもらいました。
展示会のDMで紹介した付下げは、小布施の栗のいがを染料にして、さまざまな糸の表情が個性的で大胆な市松のような一枚です。うーん、おしゃれ。織りの遊びの自由さが、ここ数年で表現できるようになったと小山さんは謙遜して?言います。品格、強さ、いさぎよさ、はかなさ…。いろいろなものが表現されている上に、女性を色っぽく見せてくれるのが小山さんの着物。「規制の中の自由がある」という言葉に、なるほど、と思いました。
オレンジに緑のぼかしの付下げは、「この色が出したかった」という一枚です。テレビで緑とオレンジという組み合わせのすてきさを見て、それを着物で表現しようとしたものです。
どれを見ても、ためいきが出るうつくしさ…。
展示会は来年2月に東京・銀座でも行われる予定です。